東京S邸、ご自宅での打合せにも参加させて頂いた。現場見学もさることながら、この家に住まうご家族に会える事を楽しみに東京に向かっていた。

東京都庁が見える
打合せが進んでいく。先ずは親御さんの世帯から始まり、子世帯の打ち合わせへと進む。前回から持ち越した内容と、今日の議題をメモしてあり、双方確認し合いながら、理路整然と議事進行していく。仕上げ類など、施主のお好みを聞き出しながら、自分の意見を入れて統一された空間へと導いていく。仕上げの色の決定では特に重要な事だ。建物の評価は過程ではなく、結果でしか評価されないので、ここの意見の集約は大事なものだ。

和室天井
S邸は二世帯、三世代が住まう家である。1階は親御さん、2階は息子さん御夫婦とその子供さんの住まいだ。そして先に紹介した、この御家族ゆえの空間が、一階にある和室だ。客間としても機能するが、家族が集う場としても絶妙の位置に配されている。1階世帯、2階世帯それぞれの独立の玄関があり、2階世帯は玄関で靴を脱いで、直ぐに階段を上って2階に上がるのだが、2階世帯の玄関の真正面に、この和室は配されている。玄関から入る度に、自然にこの和室が意識される事になる。1階世帯からは、主室から庭を介して和庭を持つこの空間に正対する。勿論この室の外観は内部に想像されるそのままの和の建築だ。

母屋と隅木は北山杉磨き丸太
各世帯の自然な視線の先に配された、家族の空間。「象徴」と表現させて頂いたが、造形としての日本建築も見せながら、家族を象徴させる。二世帯住宅への提案でもあるし、この御家族ならではであるとも言える。建築は数値や性能だけでは表せない部分が多いし、生活は既成の枠に押し込められるものでもない。「家」のありようを深く考えさせられる。
(黒坂)