大山の家

「東京S邸:現場内部」

この処の出張や集中して仕上げたい仕事もありましたので、ブログの更新も滞っておりました。お詫び申し上げます。東京S邸の続きを。。。
作図台

作図台

東京での現場で、加工場は青森。現場よりの細かな加工寸法には、図面も必要である。東京S邸の現場内の一画には、このように作図台が設けられている。青森の現場であれば、当社の加工場の製図台で事済むのであるが、出張仕事であるのでそれも適わない。なので、こういった作業のためのスペースも必要だ。実はここが、一般的な建築と決定的に違う部分でもある。規定寸法で加工された材を組むだけの建築と、このように、設計図面を基にしながら、設計者の意図を汲んで、各部の見出しやチリ際の寸法などを出していく。中里棟梁の現場所以とも言える。大工が製図台に向かうなんて、一般の方は想像もしない事であろう。

内法指示図

内法指示図

設計図を基に足元の石の加工図、木構造の取り合い関係、細かな造作部材と全て中里棟梁は自分で線を引き、設計者に確認をとる。メンの取り方や、継手の位置は特に留意すべきところで、設計図の読み込みが、ここに現れてくる。気に掛るポイントを事前に抑えてくれるので、中里棟梁への信頼も増しているものと感じている。

家具取りあい

家具取りあい

大工だけでは建築は成らず、設備関係、電気関係、家具や建具、塗装や左官などなど。完成形の意志疎通のためにも、現場各所には指示図面が張り出されている。大きな現場でもあるので、こうして細かなミスが無いように配慮している。何度も書くが、建った構造体が既に仕上げである。それに木部に無造作な穴を開けるような仕事も望んでいないので、こうやって注意も促しているのである。

月舘監督

月舘監督

木材の手配は中里棟梁が、それ以外の各種業種の調整や手配、工事の進捗の上でどうしても必要な現場監督も青森から出張している。当社建築部の月舘がこの現場にあたっている。勿論、東京都内に泊まり込みだ。私自身も神奈川県横浜市で5年前に、設計監理と現場管理の仕事で泊まり込みで現地で過ごしたが、衣食住を自分でこなし、仕事も夜遅くまで及ぶので心身の苦労はよく分かるつもりだ。現場監督もストレスの溜まる仕事であるが、完成引渡しの時の感動は、これらの苦労を味わったものでしか分からない。

建築は、見えない部分の仕事も遥かに多いものだ。カタログや性能数値に表れない部分、そこにこそ人間がつまっているように思う。

(黒坂)