大山の家

八戸市田向・木組の家

 今、八戸市内で木造建築の家を造っている。
ホームページをご覧の方は先日、建て方見学会が行われた建物とお気付きの事と思う。土台は栗、柱は杉、梁に赤松と、当社の在る青森県三八地域の木材のみを使用している。敢えて木造建築と呼ばせていただくのは、現地をご覧になった方はお解かりであるが、木を組ませながら架構を成していく、木造建築の本来だからである。今では伝統構法と呼ぶ方がしっくりくるのであろうか。
大きな断面を持つ木材が、精緻に且つダイナミックに組まれていく。

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建て方、リビング上の吹抜けより

 通常の建物では土台敷きから2日もあれば屋根の形が見え、建物のシルエットが現れる。だが、この建物はそうは行かない、漸く7日目で屋根垂木まで並べられた。しかも外観は厳重にシートで覆われている。これは、その組まれている構造材がそのまま意匠となって現われるからで、絶対に濡らしてはならない。材料そのものも、養生シートに覆われている。丁寧に丁寧に仕事がされていく。

 大工の技量も相当のものを要求される。私は木集め後の丸太の加工から見ているが、丸太は当然一本一本違う形で、それぞれに違うクセを持つ。それらを全て見極め、適材を適所に配していく。加工に失敗は許されない、特にこの建物の妻側にある投掛梁など、漸くに見つけた赤松。自然な曲がりを持つこういった材料は市場に出る事は先ず無い。是非、現場にて確認されたいと思う。

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投掛梁のその仕口

「造り手の顔が見える建築」と言われる。職人無しでは建物は造れない、その職人に本物の建築を教えることにも情熱を傾ける。建築のみならず、人としての本来の心のところに響くものがある。

 2月5日(大安)上棟式が執り行われた。
上棟に相応しい晴天で、気温もこの日だけ高く、まさに天も祝福してくれている様である。棟に五色の旗がはためく。新興住宅地だけあり、パネル構法やツーバイ構法の家が多い中、木の家が建っている。一般の人々も口々に「凄い! 」と言葉を発する。建築は分からなくても、本物とはそれだけ訴えるものであると確信する。

関わる人、それぞれの熱い思いが一つに組まれていく。

(設計:黒坂)