大山の家

「東京S邸:加工場にて」

東京S邸、正式に契約書を交わす以前に、既に足りない木材の調達に奔走していた。完成予定は既にお聞きしていたので、それに合わせるために事前に動いていたのである。幸いにして、良い材料が揃った。

手板を見ながら

手板を見ながら

実施設計図を基に手板(ていた)を起こす。大工が書く平面で、建物の北東角を基点に、X方向(横方向)に西に向かって「い、ろ、は、に、ほ・・・」、Y方向(縦方向)に南に向かって「一、二、三・・・」と、3尺(909ミリ)おきに番号をふっていく。番付というが、例えば「ほ十三」と書かれた材を見れば、どこの部材かがこれで分かる。

橘大工

橘大工

中里棟梁の脇を、脇棟梁(わきとうりょう)達が固める。脇と言っても、棟梁をこなす大工達だ。私も手板を見ながら、加工の打ち合わせをするが、これが大工それぞれに個性があって実に面白い。手板だけ見ても、誰が描いたか分かる。平面なので、材の位置関係の他に、高さの情報が事細かに入っている。特に、このように木が組まれていく建築は、各部の高さの取り合いが難解なのだが、大工達は寸分違わずに墨を付け、刻んでいく。

墨付けの木材

墨付けの木材

木に墨を付ける早さも相当な早さだ、手際よく墨が張られていく。この墨付けも、隠れてしまう部分なら間違っても加工さえ間違わなければ良い事だろう。これが、そのまま現れる部分、例えば床柱や役物(やくもの:意匠的に見せる綺麗な部材)など、一本で数十万もする部材だと、慣れるまでは手が震えるという。失敗すると、それだけでその材は使えなくなるからだ。

木材の積込み

木材の積込み

東京へ木材を運ぶ、これも運送会社任せではない。車に積込むのも当社の手で行う。上手く積み込まないと、材料が運送の間に傷んでしまうからだ。先ずは建前に必要な構造材と、屋根や壁、床の下地材が出発。現場の進捗に合わせ、加工材が東京に向かう事になる。

次回は東京の現地を紹介したい。

(黒坂)