大山の家

第1回あおもり産木造住宅コンテスト 最優秀賞受賞

 昨年行われた、標記のコンテストで応募15作品の中から、当社の作品が最優秀賞を受賞。2月3日に県庁内で表彰式が行われ、施主の川口様・当社社長・現場にあたった中里棟梁が出席。賞状と記念品をいただきました。

 「木に住まう」これが応募作品のタイトルである。
木に住まう、込めたのは施主の木の住まいへの熱い思いそのものである。
それには、施主と当社との出会いを語らねばならないだろう。
3年前の八戸ニュータウン展示場オープンイベント、4日間開催した初日に来場された。私もその場に居合わせ、御主人に応対したが、かなり興奮しているのが分かる。「自分の探していたイメージの家が、まさにこの建物なんです! 」直ぐにその場で、プラン打合せとなった。ご自身も仕事上で立体図を描かれる。平面計画は既に出来ていた。数後日には各室のパースも届いた。御主人の頭の中には、既に完成型があったのである。
だが御主人も物造りを心得た人、造り手つまり大工その人を探していた。

 イベント後にちょっとした手直しで、中里棟梁が一人現場で作業していた。
そこにひょっこりと現れた御主人、恐る恐る見学したい旨を伝えたところ、快く中に招きいれ自分が棟梁としてあたった事、苦心した事などを話したそう。直ぐにその場で意気投合、信頼たる棟梁と確信され、当社で工事を請け負わせて頂いた。私が実施設計図を描いたのだが、施主の描いた詳細なパース、設える家具類も提示された。それに大工の手板を見ながらの実施設計図、人生初の実に設計者要らずの建物となった。

中里棟梁

中里棟梁

 設計図進行と同時に木集めが始まった。山と施主を結ぶ作業そのものである。現在の木材流通過程では、湾曲した木材は流通しない。直のもので4m、湾曲したものは2m以下に裁断され、機械に通し製材する材寸に伐り刻まれていく。こういった材料では、我々の造る木の家には使えない。通し柱とするための長物、梁として使うための斜面に生える湾曲した赤松を求める。ここで妥協すると、この建物が成し得ない。棟梁も真剣そのもので足を棒にする。木材集めも運であるとつくづく感じる。いくら探しても無いときは無い、その家に使うために生えていたと、思わせる木が見つかる時もある。この時は施主の熱意が呼んだのだろう、好みの曲がりを持つ赤松と通し柱にする26尺ものが見つかった。

 現場進行もご想像通り、施主と棟梁の好みで進んでいく。当社の加工場にも足繁く通われ、部材を細かく確認された。丸太を切り落とした辺材の丸みも積極的に現場に用いられた。2階ホールの手摺や、框に使われたが、後日県の担当者やTV取材のクルーが、「良いですねぇ」と言いつつ手で撫でている光景が忘れられない。自然の造形、その自然なる肌合いには、やはり人は惹かれるのであろう。

受賞作品「木に住まう」

受賞作品「木に住まう」

 住み手と造り手、双方の熱い思いが結実したこの建物、木が落ち着くまで・・・と細心の注意を払いながら、暖房の温度を調整して住んでいると聞く。冬は厚着をし、暖房を抑えるため家族が一箇所に集う。自然と家族の会話が弾む。設備偏重主義と感じられる昨今の住宅、個室に各設備完備が当たり前の昨今の住宅に建築人として自戒の念である。

 住まい手と造り手の熱い思い、山に育つ木と建築材料としての木、「最優秀賞受賞」ここに結実したその証しともいえる。木造建築に携わる者として、心新たにする思いである。

(設計:黒坂)