大山の家

引き違い戸(取付け方)

襖や障子、板戸、鋼製建具など日本の住宅で多く見られる引き違い戸ですが、どっちが手前で正しいんだろうなどと取付け方に疑問を持った事はありませんか。

引違い戸でよく目にする戸の枚数は、2枚、3枚、4枚が多いと思います。
2枚、3枚の場合は建具に向かって右側が手前、4枚の場合は主たる居室側の中央の2枚が手前になります。窓や壁との取り合いで逆にせざるを得ない場合もありますが、基本は右前および4枚でしたら中央が前となります。4枚の場合で主たる居室が不明な場合は、床の間のある部屋>次の間>廊下・縁側>外部空間という順位で考えて取付けると問題ないです。

また、2枚、3枚の場合に右前とする理由は、左前だと死者の装束に用いる衿合わせの重ね方と同じで縁起が悪いから、家業が左前になる(運が悪くなる、経済的に苦しくなる)から、日本人は右利きが多いから、などなど諸説あるようです。建築の世界は縁起を担ぐことが多いので、不吉とされることは避けることから右前とすることが継承されているようです。

これから引違い戸を見かける事がありましたら、どちらが手前になっているかぜひ見てみてください。

《 ここで豆知識④! 》
建築とは少し離れますが、どうして着物の襟は右前なのか、少しだけ調べてみました。

日本では埴輪や高松塚の壁画に見られるように,古くは左衽(さじん)【向かって左側の襟が前】の衣服が多かったようです。701年(大宝元年)に制定された大宝律令により、衣服について男は盤領(あげくび),女は垂領(たりくび),いずれも右衽(うじん)にせよと明示されています。その後、718(養老2)年に養老律令衣服令が施行され、719(養老3)年2月3日には,庶民の原始的小袖の垂領にいたるまで右衽(うじん)【向かって右側の襟が前】にせよとの令が下されています。この法律が定められたことにより着物の襟は「右前」が定着したようです。

調べてみると他にも興味深い事がたくさんありました。建築をきっかけに他の世界のことも学べると楽しいですね。(かねた)