大山の家

手刻み(継手・仕口の加工)

「手刻み」と聞くと何を想像されるでしょうか。
建築に全く興味がない方であれば、何それ聞いたことない。もしくは工作?積み木?料理?など思い浮かべる方もいるかもしれません。建築に少し興味があったり、その言葉を聞いたことがあるという方なら、大工さんが手作業で作ること?と思う方もいると思います。

建築でいう「手刻み」とは、大工さんが木材に墨付けをして大工道具(ノコギリ・カンナ・ノミ等)を使って加工していく工法のことを言います。昔から伝わる木材の加工方法です。昨今の建築ではプレカット工法が主流となってきているため、建築現場を見学しても刻み加工を目にする機会は減ってきています。工期短縮、コスト削減、職人さんの加工技術の簡素化など時代と共に建築の現場も変わってきているからです。

ここで、じゃあどちらの工法がいいのかと聞かれると、どちらにも一長一短があるため、正解はないと私は思っています。
ただ、あくまでも個人的な意見ですが、手刻みができる大工さんは丁寧な仕事をされる方が多いように思います。そして、いろいろな納め方を知ってらっしゃる方が多いんです。たぶん木造住宅の継手や仕口など多くの工法が大工さんの頭の引き出しに入っているからなのではないでしょうか。例えば、新築等で設計上では難なく納まっていた個所でも実際の現場では納まりが厳しい場合があります。そんな時も意匠を崩さないどころか目を見張るほどの納めをしてくれたりします。また、リフォームなどの改修工事では、現場に入って解体してみると構造材や造作材が目を覆いたくなるような状態になっている時があります。そんな状態でも構造強度を保ちながら美しく納めてくれる方が多いです。それってすごいですよね。いや、すごいことなんです。

ですが、そんな素晴らしい技術も衰退の一途を辿っており、手刻みができる大工さんはどんどん減ってきています。一説によると、現在の大工さんの10人に7人は手刻みができないとか・・・。とても残念な話です。伝統工法を守ることは、コストの問題、時間の問題、継承者の問題など多くの問題があり、ハードルはかなり高いものだと思います。しかし、継手や仕口は日本独自の工法でもあるため、ずっと継承されていって欲しいです。というより、もっともっと活性化していって欲しいと思います。

ちなみに当社の大工さんは手刻みができる方ばかりです。そしてこれからもずっと、当社ではこの技術は継承されていくと思います。

《 ここで豆知識③! 》
継手には男木(おぎ)と女木(めぎ)があります。凸がある側を男木といい、凹みがある側を女木といいます。継手の名前に腰掛とついている継手は、女木の下半分に出っ張り(あご)があり、男木を受ける形になっています。男木が女木に腰をかけるような形をしているため、この呼び方を付けているそうです。

ここで土台に使う継手のうちの2種類を簡単にご紹介します。

◆腰掛鎌継ぎ
「鎌継ぎ」は、男木の頭が「蛇の鎌首」に似ていることから名付けられたようです。引張力に強く、土台の他にも胴差し、桁、母屋など横架材の継手に用いられます。
◆腰掛あり継ぎ
「蟻継ぎ」は、男木の頭が「蟻の足」に似ていることから名付けられたようです。鳩の尾に似ていることもあり「鳩の尾継ぎ」とも呼ばれているようです。鎌継ぎと同じく引張力に対応する継手ですが、鎌継ぎより強度は劣ります。

上記写真の継手は、当社の八戸本部ショールームに展示していますので、ぜひ見にいらしてください。(かねた)