八戸市田向(たむかい)の木の住まい、見学会の最中である。見学された方はもうご存じと思うが、この建物の構造材と仕上げ材に赤松をふんだんに用いている。青森県南の特に三八地域の赤松なので「南部赤松」と呼ばれる。
松材であるからこその粘り、また何とも言えず奇麗な杢目が出る。構造材として見せるように使っても、板材として仕上げに使っても奇麗だ。美点ばかりではない。割れやすく、縮みやすく、捩れやすい。だから扱いは簡単ではない。そこにこれまで培われてきた、知恵と工夫がる。
構造材としては、その捩れを利用し木を組んでいき、強固な構造を作る。仕上げの床に使った場合も、後から詰めるように、接着材など使わない。一度暴れさせて補修してやると、後はそのままだ。何と言っても本物の木である。多少隙があろうが気にならない、住む程に味わいが出て自分のモノとなっていく。
今、県ではこの「南部アカマツ」をブランド化しようと動き始めた。全国的にマツクイムシの被害で、松材が手に入りずらい状況でもある。当社は創業当時より、この地元の赤松を使ってきた自負がある。県の関係者や新聞社もこぞって、この建物を見学されている。その良さが伝われば、幸いである。
以前、弘前市に茶室の小間と広間がある家を建てた。そこにも材料としてこの南部赤松を使った。「赤松は製材品も良いけど、木姿も良いね」と、ここの御主人、門かぶりになるような枝張りの赤松をご自分の足で見つけ、広間の前庭あたりに植えられた。通りからの目隠しを考えての事であるが、この弘前の地に生きている南部赤松がある。魅せられる人は多い、私もその一人だ。
(設計:黒坂)