大山の家

「木作り-2」

先日の木作りの続きを。
墨出し

墨出し

青いテープが見えるが、丸太全体を改めながら正面を決めつつ、どこを床にするかを探っている処だ。床框も取り付くので、その取り付く位置の木の表面も探りながら慎重に位置を決める。そして墨が決まれば、先ずは余分な部分を落し、ツラを付けていく。筍ツラも高さを決め、その少し手前で止める。最終仕上げは、現場で削るからだ。このツラの高さも、室の大きさや意図で違うもので、前田伸治氏からつぶさに聞きながら、大工の作業を見守る。

赤松小丸太の筍ツラ

赤松小丸太の筍ツラ

直径9㎝に満たない赤松の丸太である。その太さでも、これだけの目が出てきた。介した一同、笑顔になる。野趣そのものの材が、建築材料としての新たな命を吹き込まれた瞬間だ。削った中里棟梁も「良い目だ」と表情を和らげる。

丸太は元(根元側)と末(木の上部)で太さが違うものだが、表面には微妙な凹凸がある。筍ツラを鉋で付けるが、凹んだところがあると、そこはいびつな形のツラをなす。微妙な凹凸は見た目では殆ど分からず、木を横から睨みながら、また手で感触を当たりながら丁寧に探っていく。慣れた棟梁は、そういった一連を熟知しパッと見で大よそを見当するのであるから驚く。まさに職人の技と勘、身震いするほどにその仕事に惚れ込む。

微妙な凹凸を探る

微妙な凹凸を探る

この杉磨き丸太は軽く絞りが入ったものだが、これも筍面を入れると、一気に表情が出る。磨き丸太は数寄屋建築以外でも良く使う材で、私も時々使っているが、毎回同じ様な加工を施しているに、それでも新鮮な美しさを感じる。やはり一本として同じものが無い、自然のものだからであろう。

杉磨き丸太の筍ツラ

杉磨き丸太の筍ツラ

最後は磨き丸太を床框に落した処だ。天端にツラを付け、見付け(奥行き寸法)を決める。ここらの寸法は、その材を見ながら、前田伸治氏より細かな指示が飛ぶ。この床框はえくぼが中々良く、これは完成の折に改めてご紹介したい。おそらくは施主も気付かないであろう位置にもあるのだが「そういう処が景色を作るんだと信じている」との言葉。陰影のある室内に醸す小さな景色に思いを馳せる。

杉磨き丸太の床框

杉磨き丸太の床框

「景色を見る」という。室内空間のこういった材の、細かな表情を拾い、とり付く材と対峙するディテールに妥協する事なく息吹を与えていく。私などにはまだまだ見えるものではないが、手で作るだけでなし、意識を投入してこその景色であるとも感じる。そこに妥協は無い。

(黒坂)