大山の家

「完成見学会を終えて」

相変わらずも、ブログ更新が滞っております。現在、弘前W邸が最後の現場追い込み、北海道が建て方の最中、それと岩手県軽米町で着工。その他に設計物件で、青森県内と岩手県内の数件を担当し、打合せや移動の毎日である。そんな中、24日~25日に開催した完成住宅見学会、これも私が担当させて頂いた住宅で、展示会場にも両日詰めて、ご案内させて頂いた。

趣味に多彩なご夫婦で、御主人は弓道を楽しまれていて、IT関係にも大変強く、奥様はピアノや琴、音楽がお好きな方である。そんなお二人を反映し、御主人は畳にコタツ、奥様はソファーと、望まれる寛ぎ方も正反対であった。こう書くと、相反した性格でそれぞれの個の空間を望むかと思われるが、そうではない。常にお互いの息づかいを感じるような、ふと見ると相手が視界に入るような、そんな距離感を望まれた設計であった。

玄関よりリビング方向を望む

玄関よりリビング方向を望む

多趣味を反映し、その優しいお人柄そのままに、来客も多いという。個の部分、公の部分と閉じたり開いたりする必要がある。見学会に訪れた方はお分かりであるが、ドアは一枚も無く全て引戸、連なる変化を楽しめる家でもある。

南面の1間半のサッシ内側に障子を入れた。この柔らかな光が何とも好きで、当初から置く事になっていた、グランドピアノにも合っていると思うが、如何だろう。これがリビングで、御主人の和室、寝室も建具を隔てここに連なり、リビング上を吹き抜かせ、2階の個室も吹抜けに障子越しに連なる。つまりは全ての居室が、このリビングのグランドピアノに向いている。キッチンに立った自然な視線の先にピアノが来るようにも、配している。何しろ、奥様が探しに探して、ようやくに手に入ったピアノであるから。

リビング

リビング

玄関からリビングに入る杉の格子戸は、奥様が現場で指示されたもの。私の設計では、縦繋の格子戸で、柔らかな感じにリビング内部を遮断しようと思っていたが、玄関からピアノを見せたい意向もあり、こうした格子戸にされた。こうして、御自分方の意見を入れながら家を作るのも手作りならではで、ここに建具が納まった時の、奥様の笑顔が今でも印象に残っている。

当社の建築を気に入って下さり、直接に担当させて頂きながら、打ち合わせを重ねた家。「黒坂さん、あなたに任せた。」と言って下さった、ご夫婦の期待にどれだけ応えられたのだろう。昨日、改めて一人建物を見渡しながら家中を歩き回り、反省と意図を反芻していた。「このご家族のための家」そうなった事を確信した。

障子とピアノ

障子とピアノ

無垢の木材で作った家。これからが本当のお付き合いになる。T様、心より完成のお祝いと、これまでの御礼を申し上げます。ありがとう御座いました。

(設計:黒坂)