大山の家

「矩計:かなばかり」

矩計(かなばかり)と言っても、一般の方々には何の事か分からないだろう。建築の高さの詳細寸法である。木造建築では極めて重要な要素で、基礎から屋根までの梁組みや床組みを意識した高さを、これで決めていく。外観プロポーションを決定付ける大切な要素でもある。

矩計図1

矩計図1

箱型に四角い部屋が連なる家では、天井裏のスペースで構造が組まれるので、単純に部屋の天井高さを決めて、柱の高さの規定寸法、3mとか3.3mとかなのだが、それで単純に建築の高さが決まっていく。規定モジュールで組み上げれば、それだけコストも抑えられるのであるが、構造がそのまま意匠となるような建築では、そうも行かない。内法(うちのり:内部の高さ)を決めながら、ギリギリで納まる寸法を探っていく。

矩計図2

矩計図2

写真のものは、実施設計図も完成した物件であったが、縁側の内法高さ(うちのりたかさ)と、それに続く和室の欄間の高さの変更に伴い、棟梁と打合せながら追い出した図面だ。この寸法に合わせ、実施図も書き直す事になる。大きな構造が持つ、小さな寸法の組み合わせ。木造建築の図面の中で、矩計図(かなばかりず)が一番好きな理由はここにある。

(設計:黒坂)