弘前W邸、上棟を迎える事が出来た。万感の思いである。ここまでに至る5年間、施主である御主人も、自分の家を建てるにあたって、それ以上の時間を費やし、知識を吸収しながら、方々を見学に行かれていた。その全てがここに集約し、形となって現れてくる。私以上に様々な思いが寄せた事であろう。心よりお祝い申し上げたい。
「思った以上に大きい!」御夫婦の第一声だ。税制優遇の240㎡以下に抑えているが、2階に比べ1階がかなり大きく、且つ敷地の一番高い処に建つので、面積だけでなしに大きく見える。だが、玄関に下屋(げや)も下ろすが、これらは手を伸ばすと触れる位置に軒先が来るし、2階の登り梁なども手の届きそうな位置から登らせている。内部の意匠は進捗次第で御紹介していくが、天井も抑える処と、可能な限り高くとる部屋と、吹抜けの無い家だけに変化を持たせている。まだこの状態であるが、登り梁などはこのまま室内に露れてくるのでW邸御主人も空間の意図を掴めたようで、嬉しそうに梁を眺めていた。ちなみに土台はヒバを使い、構造の殆どは杉。以前紹介した、施主奥様の親御さんの山から伐り出した杉で建てている。屋根の野地板も板に挽いて、その材を使ったものだ。人工乾燥ではなく、天然乾燥なので、赤身の部分などとても綺麗に輝いていた。
構造材は弘前の現地に入り、こちらの加工場では内部の造作材の加工をしている。私の図面も、線や書き込みが多く、現場が始まってから寸法を決める部分もあるので、加工する人間も何度も電話で各部の確認を請う。真四角の部屋でクロスを貼るだけの部屋だと、図面も書き込みが少ないが、構造や意匠、家具や設備に絡む工事が膨大にある住宅なので、作る方も尚更慎重に事を運ぶ。
先日の上棟式、施主御家族、双方の御両親に、当社社長はじめ社員3人に、鳥谷部棟梁を筆頭に大工、設備担当会社の社長さんまで出席頂き、厳かな中に無事、上棟式を終えられた。これまでを思い、これから竣工までの期間、これまでの全てがここに集約されるのだから、完成までは濃密な時間になる事は間違いない。「良い家にしたい」それだけを思う。
(設計:黒坂)