大山の家

「伝える」

相変わらず、このブログの更新も滞っている。抱えている案件や、今動いている現場、更にエコポイントに長期優良住宅、フラット35Sなども加わり、これまでの仕事にプラス、膨大な書類や計算書と格闘している状況だ。それでも一つ一つの案件には真剣に取り組み、建築として良いものを作りたいと思っている。各案件ともクライアントとの打合せを重ねながら詰めていく訳だが、各人各様の家に対する考えがあるので、これは毎回の楽しみでもある。丁度、対象的な案件があったので、そのエピソードをご紹介したい。

一つは「打合せの図面なんかは、全部手描きでいいよ」とおっしゃっていた方。間取りや大きな意匠、細かなディティールなども、全てフリーハンドの図面で詰めた案件だ。施主が望んだのは、スピード。ラフでスケッチしながら建築を考え、その後にパソコンで入力している時間が勿体無いと言う。御自身エンジニアである身であるからのご要望だ。前述の通り、普段は鉛筆片手にトレーシングペーパーにエスキースを重ねながら、最終形をCADで入力している。スケッチしないと形が見えて来ないからだ。

フリーハンド図

フリーハンド図

もう一つは、パソコンでの3Dの立体で建物が見えるソフトで作りながら、打合せている案件。他社と競合し、大手などはそういうプレゼンを駆使しながら打合せているようで、それと同じ方法で進めている。外観から内観、写真のように鳥瞰図なども簡単に作成でき、入力の仕方次第で簡単にビジュアル化出来る。

鳥瞰図

鳥瞰図

どちらがお好みか人それぞれであるが、設計者としての面白い話しもある。私などは建築に入った時から手描きが当たり前で、前述のようにペンを片手にスケッチしながら建築を形付くっていく。一方、今は製図台などで図面を書いた事がなく、いきなりパソコンに向かい図面を書く人もいる。慣れの問題であるが、私はいきなりパソコンに向かっても、何も出てこない。クセなのか慣れなのか、鉛筆を持たないと思考が働かないのだ。三者三様に思う事、感じる事は違うのだろうが、設計の意図を伝える手段の、それぞれである。

私個人の意見であるが、CGだと表面的な部分のみで木造建築の本質が全く見えてこないと感じている。見る方はそのグラフィックに目が行くが、質感というのだろうか、意図している距離感などもスポイルされてしまい、玩具のように感じる。それでも建築を伝える手段の一つとして、上手く利用して行きたい。

(設計:黒坂)