大山の家

「東京S邸:見学」

東京S邸、引渡し前のクリーニングや片付け作業が盛んな頃、上京して見学させて頂いた。正直に申し上げると、今は完成して、お引渡しも済んでいるので、完成としての最終報告をしたいのであるが、書いても書いても、上手くこの建築を伝える文章が出てこない。建築としての完成度がとても高く、まだ私の頭の中で咀嚼できていないのが、正直なところだ。

玄関ホール

玄関ホール

大工、左官、屋根、家具・建具、最後のクリーニングも当社の作業員と大工の手で行った。監督の月舘も青森から出向き常駐、職人と共に寝食を共にしながらの7ヶ月、本当に苦労した事と思う。それらの苦労が、完成引渡しの際の施主の労いの言葉と、建築への最高の評価で、全て報われた事だろうと思う。

石の壁

石の壁

完成引渡しの時に、施主のご好意で最後の酒の席が用意され、共に酩酊するまで呑み、苦労話も笑い話に代えながら、大いに盛り上がったとの事。施主、設計者、施工者、共に一つの建築の完成を祝い、これまでの時間を共有できた事、途中での厳しい状況や悩んだ事など、全てが良い形に結実した証であるのだと感じている。

庭

住宅の評価は、外観や内観、間取りに敷地計画に材料程度の事が一般的には評価の対象だろう。「上手くこの建築を伝える文章が出てこない」とは、そんな建物の表面的な部分に留まらない、もっともっと深い意味での「建築」これをヒシヒシと感じた作品だからである。建築の中に設計者が見えるのは当然であるが、施主の意向も垣間見え、それらが高度な次元でバランスされた建築であり、人の感覚の寸法とでも言おうか、心地良く抑制の効いた空間構成。そんな東京S邸完成の紹介は、次回に譲りたい。

(黒坂)