東京S邸、現場も最終コーナーを廻って最後の直線。と言った処だ。最終仕上げが盛んである。大工に左官にタイルに家具、建具。それらが終わった後に、クリーニングや設備機器の最終チェック、そしてお引き渡しとなる。
タイルを貼っている職人も、青森から行っている。戸舘(とだて)左官工業だ。塗り壁、土間、タイルと一人の職人がやってくれる。八戸市田向(たむかい)の「技が支える木の住まい」でも紹介した、上野さんを中心にあたってくれている。私とは神奈川県横浜市の現場で、寝食を共にし現場を納めてくれた。その職人がこの東京の現場に入ってくれている。仕事に嘘をつかない人なので、安心できるし何より心強い。今私が出来る恩返しは、こうやってブログで紹介する事ぐらい、現場で苦労を分かち合った者にしか分からないものもある。
階段の桁にも、紛れもない南部赤松の木目が見えている。とても美しいものだ。憶えて頂きたいのが、丸太を伐ると自然にこういう目が出てくるのではない、と言う事。「この寸法のここの部材なので、こういう木目を見せたい」そう狙って、丸太を落としていっている。柾目で見せる空間、板目で見せる空間、中杢を見せる部分。全て仕上がりの室空間を意識して、木を伐っている。
先日、青森県内の他社の住宅展示場を数棟、見学させて頂く機会を得た。是非ともお会いしたい方もいらしたので参加させて頂いたのだが、初めて見る他社の木の家。大変な勉強になった。真摯に木の家に向き合っている会社、単に木を使ったというだけの会社。建築の面白い処は、それを評価する人間が建築のプロであったり、建築には全く知識のない一般ユーザーだったりするのに、その意見はあくまで対等に建築にぶつけられると言うことである。これは私自身も真摯に受け止めたいと思っている。
木の建築は会社のネームバリューが作る物でなく、職人の手に成るもの。完成は改めてご紹介したい。
(黒坂)